takshigaempのブログ

救急医!志賀隆 Takashi Shiga MD MPH

米国救急専門医です! たらい回しをなくしたい!ヘルスリテラシー・情報格差の改善を!元気で個性的な人材を育成をしたい! ※発言・文章は個人のもので組織のものではありません

コラボレーションや対話からチームやネットワークを作り出す

2023年の個人的の部分は下記のように考えています。

 

コラボレーションや対話からチームやネットワークを作り出す。それによって危機管理に臨む集合知を産み出す。そんな活動を^^

 

扱いにくいところのある僕ですが、

コラボレーションのお声がけお待ちしております^^

 

●新しい友人との偶然を大事にする
ー医療とICT
ー医療メディア
ーパブリックリーダーシップを育てる仕組みを作る

●連載・書籍を立ち上げる
ーERの技術
ーERの社会性
ーERのシステムの部分

NPO
ーエモさ×伝わるについて考える
ー医療xパラレルキャリアについてもう少し考える
ージェネレーションギャップx権限委譲について考える

 

それが家族の助けになるのなら…

 

「お義姉さん。ごめんなさい。」

涙を流しながら患者さんは謝った。

 

医療面:

Aさんは失神で運ばれた特に持病のない19歳の女性だ。救急外来に失神で運ばれる若い女性は多い。失神は心臓の不整脈であったり、胃潰瘍の出血からだったり、くも膜下出血の頭痛と一緒になったりなど命にかかわる病気のこともある。ただ、多くは神経調節性失神と言っていわゆる社会で「貧血」と呼ばれるものだ。この失神にいたる背景は色々とあって、疲労・睡眠不足・ストレス・月経からの不調など多種多様である。よくあるのは段々と気分が悪くなってきて、血圧が下がるにつれて眼の前が白くなったり、暗くなったりする。数分の症状の後に気がついたら倒れているのだ。

 

失神は倒れる前後の状況が重要だ。救急医は問診を追加した。Aさんが倒れたときに救急搬送を要請したのは、お兄さんの妻つまりお義姉さんだった。Aさんがパソコン教室に通うということで送ってあげようというところだった。お義姉さんは私を呼んで「先生ちょっと個室で話したいことがあるんです。」と言った。個室に移動すると「先生は私の考えるところAはパソコン教室には通っていないと思うんです。今日はだから教室まで送ってあげる、といったところだったの。」

この話を聞いて「あ、このあたりがAさんの失神の原因なのかもしれないな」と救急医は思った。

 

社会面:

少しづつお義姉さんの話を聞く。Aさんの社会背景は複雑だった。彼女は10代のお母さんで10ヶ月の赤ちゃんがいる。高校の同級生と結婚していて、夫の実家に同居しているのだ。実家には独身のお義姉さんも住んでいてAさんの家族さんにんと夫のお祖父ちゃんお祖母ちゃんをあわせて8人家族なのである。Aさんはまだパソコンもあまり使えないし赤ちゃんも小さいため炊事、洗濯など家事をすることで家族に貢献している。ただ、夫の給与が限られることもあり、自分のお小遣いはほとんどない。また、トイレは2つあるがお風呂は一つであり、8人で使っている。夫の部屋だったところに家族3名で暮らしており、なかなかプライバシーを維持するのが難しいところなのだ。

 

夫が到着してお話をしていると「Aさんはやはりパソコン教室には通っていないだろう。」ということになった。お義姉さんは怒っていた。救急外来にはAさんの両親、夫の両親も揃い、家族会議が始まってしまった。

 

救急医はAさんとお話をすることにした。

「10代で夫の実家に同居されているのは大変ですね。2世帯住宅の設計になっているわけでもないようなので結構大変ではないですか?」

「先生、私苦しい…同級生は今買い物とかして綺麗な洋服を来たり人生を楽しんでいる。私も子供が可愛いけど今はお財布に900円しかないんです。みんながとても親切にしてくれるけれど、お風呂にもゆっくり入れない。ご飯ももう少し食べたいと思うけど遠慮してしまうんです。」

 

問題解決:

救急医は夫と話すことにした。

「旦那さんAさんはパソコン教室にはいっていなかったみたいですね。」

「そうみたいです。でも色々と苦しい状況にあったのではないかと思っています。少し環境を変えた方がいいのかもしれません。」

「そうですね。Aさんのご両親とも話してみます。」

 

ご両親

「Aはとても頑張っています。大家族に同居していて働いていないのでまだ10代なのに家事を一手に引き受けて、子育てをしています。そんな中、パソコンの勉強をしたいという気持ちは本当だったのだと思います。実際に教室には行っていなかったのかもしれない。でも彼女にとって家事でもない育児でもない一人の時間が必要だったのではないかと私たちは思っています。ご飯も食べたいだけ食べれないし、お風呂もふっくりできなのいのは不憫です。涙がとまりません。先生!Aを私達の家に一時的に連れていきたいととおもっています。」

夫に

「旦那さん、Aさんのご両親はAさんは実家に帰ったら?とおっしゃっています。たしかに今回は失神ということできています。ただ、実際のところは心身ともに疲れて果ててしまってのではないかと私は思っています。一旦お子さんと一緒に実家に帰ってゆっくりさせてあげたらどうでしょうか?」

「そうですね。実は僕も同じことを考えていました。Aの姉は会社を経営していてAがパソコン操作ができたら雇用しくれるという話も出ています。僕の給料だけじゃ難しいけど共働きになれば3人で独立できると思います。それが一番の解決策じゃないかと思っています。」

「そうですね。それはとても良いアイデアだと思います。実現までハードルはあるかもしれませんが、少しづつ努力をしてみてください。」

救急医はAさんの担当保健師にも電話をした。

 

教育:

研修医から救急医は質問された.

 

「先生のやっていることは全く医療じゃないように思います。診療報酬には全く反映されないですよね?家族の問題に医師がそんなに首を突っ込む必要があるんですか?かなり手間もかかるし…」

「そうですね。確かに私は余計なことをしてしまったのかもしれません。ただ、ERは現代の駆け込み寺の要素もあるのです。この患者さんを神経調節性失神と診断して経過観察後に帰宅をしてもらうことはとてもシンプルです。ただ、彼女の社会的な状況はそれでは解決しません。Aさんは苦しくて苦しくてなんとか誰かに助けてほしくてやっとのことで救急車で病院にきたのではないかと私は思いました。今日は幸いなことに他の患者さんもあまりいらっしゃらず、私が問題解決をすることができる状況でした。それであれば診療報酬に反映されていなくても、おせっかいでもAさんの家族のためにベストなソリューションをプロの救急医として提供したかったのです。」

 

Disposition:

Aさんはお義姉さんに会って謝りたいといった。「お義姉さん。ごめんなさい。」とシンプルに謝ってあかちゃんを受け取り、両家の話しあいのあとに実家に帰られた。そのときの安心した顔に救急医も安堵したのだった。

 

10代の母親になった皆さんの状況:

東京都にて調査の報告がある。「3歳までの家事や子育てについてはほとんどを主に本人が行っており、子の父の子育てへの参加が非常に少ないといえる。」また経済的に厳しい状況がある。医療者も社会の一員として問題の解決に臨む必要があると考えられる。

 

参考資料:

https://www.tcsw.tvac.or.jp/chosa/report/0309_01.html

2022年 「回復」「創造」「成長」で頑張ります

2021年は部門として大きく成長できました。

 

◯診療面

4名の素晴らしい専攻医を迎え、文部教官も1人増えて医師10名体制の部門になることができました。そして、この体制の中コロナ対応にも、院内での診療、DMAT関連での多岐に渡る応援など取り組むことができました。院内においても救急搬送が12月は374名受け入れなど過去最高になっています。入院診療においても新入院が月50名を超える時もあり、コンスタントにICUでの診療、感染症、敗血症、外傷の診療を続けることができました。

2022年度も救急医10名体制で成田、那須、三田の三拠点での診療に臨めればと考えております。

 

◯教育面

今年も法人内で約600名の学生さんとお目にかかる機会があります。医学部授業(英語、日本語)、医学部病院実習、看護学部授業、大学院授業を続けていきます。

対面中心の教育となり、より効果を担保できるかと思います。インタラクティブであること学習者の能動性を確保することを大事にしていきます。2021年に出版した、「当直ハンドブック」の改訂、さらに「研修医のみなさまのための手技の本」を予定しています。みなさまのお役に立つことができればと思います。


◯研究面

2021年は筆頭1本、共著1本でした。立ち上げとコロナ対応でゆとりがなく、反省をしたところです。2022年はコロナ~の卒業を社会としても取り組み、大学人としての研究活動に没頭したいと思っています。

「新しいデータベース」での論文執筆の構想もあるのでそちらも少しづつですが、続けていきたいと考えております。

色々な先生方とコラボレーションをすることができたらと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

 

●情報発信

2021年には連載で30本の記事を書きました。今年も毎日新聞医療プレミア12本、エムスリー12本をがんばります。新しい本の構想もあり、文章を書くことで学びながら成長できるように続けていきます。

昨年同様、TV、ラジオ、新聞、雑誌などのメディアとのコラボもお待ちしております。

 

●2つのNPO

私が仲間と作った2つのNPO(救急医のEM Allianceと千葉県の医療職のための新撰医チバ)の活動を継続します。「オンラインに注力」してEM Allianceの二つの指導医養成コース、新撰医チバの夏・冬のセミナー、を続けます。若手医療職のリーダーシップを育てることができるように取り組んで参ります。

 

ということで2022年も「Restore/Rebuild」をテーマに楽しんでやって参りますのでコラボや応援何卒よろしくお願い申し上げます。 

^^

 

 

 

2022年のコロナ対策

2021年を振り返ろうと思い、昨年のSNS投稿を見ていました。予想通り、年末年始はコロナ対応、その後も第四波、第五波などがありコロナについてずっと考えて取り組んでいた一年だったと思います。

2022年についてはどうやってコロナ禍から卒業していけるか?の年ではないか、と思っています。

◯アフリカでのワクチン接種率の向上(変異株対策)

◯mRNAワクチンの改訂・国内生産(外国依存の限界あり)・接種

◯プロテアーゼ阻害薬、抗体療法の確保とロジスティクス調整

これらに組織的に取り組むことによって、第五波のような悲しい状況をさけられるのではないか考えています。

 

もちろん引き続き、マスク、手洗い、三密回避は重要です。何卒よろしくお願いいたします。

当直医のための本 序文を書いてます ^^

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序文書いてます。。。
研修医時代の思い出でもっとも鮮明なものは当直での思い出です。同期の福島先生と一緒にくも膜下出血や外傷の患者さんの対応したこと、後藤先生と一緒に一晩に4件の心肺停止の患者さんの対応をしたことを今でも覚えています。医学教育の領域では「責任を持たされた中で、必要時に指導医の助けを求められる環境」が最も成長に良いと考えられています。この意味では当直はとっても多くの学びが得られる場と考えられます。
ただ、当直がいろいろと大変なのも事実です。そして、めまいにメイロンを使う、高血圧にアダラートを使う、喘息にテオフィリンを使う、心不全ドーパミンを使うなど、標準的な治療から遠く離れた日本の医療が行われているのも当直の時間帯です。そのため、今回全国の研修医や当直に入ってくださる医師のみなさんのために、より「実践的」「簡潔で読みやすい」「学びの多い」本を作成しました。
 当直医のための本は、内科系であったり、外科系であったり病院マニュアルの発展型であったり様々なものが出ています。ただ、一番現場の知識をふんだんにもっている現場の救急専門医や小児科専門医・産婦人科専門医によって書かれた「当直医のための秘訣」が詰まった本は今までにはあまりありませんでした。ですので、今回の本書は、
●最新のエビデンスをぎっしり詰める
●薬はわかりやすく代表的な商品名を入れる
●表や図をたくさん入れる、重要なところを太字や下線にする
など実践的でありつつも、学びになる!ことを重視して構成しています。
 「先生腹痛の患者さんが徒歩来院します!」「失神の患者さんが救急搬送されます!」と看護師さんから連絡があった際に「どうする!」「何を考える!」「どんな検査や治療が必要?」と必至にハンドブックを調べる方が多いと思います。事前の先輩と後輩とのブリーフィングができると診療はとてもスムーズに行きます。ブリーフィングに役立つように本書ではCritical(命に関わる)、Curable(治療できる)、Common(よくある)3つのCで鑑別診断を分けるようにして、先生方のお役に立てるようにしています。また、救急外来でオーダーする検査や薬剤についても標準化した項目立てをしてみやすく構成をしています。
 本書は、白衣のポケットに入れてもらい「2分間で必要なことを学べる!」そんな本になればと思っています。救急科専門医は5000名を超えてきたところですが、まだまだ全国のすべての急性期病院にいるわけではありません。日本の当直・救急の現場は若手の医師の先生方や各科の当直医の先生方に支えられているのです。先輩と後輩の「耳学問」「失敗しないための知恵」が日々当直の現場で伝えらています。わかりやすさ・読みやすさとエビデンス・エクスペリエンスを両立することは簡単ではないようですが、可能と考えています。本書が当直現場のみなさまのお役にたち、日本の当直の質があがり、より多くの患者さんが当直の先生方によって救われることが我々の願いです。
 日本の当直の現場で日々奮闘する医師/看護師/メディカルスタッフのみなさまに心より感謝いたします。我々を支えてくれる家族・友人たちにも感謝が欠かせません。そして、今回貴重な執筆の機会をくださりわがままな注文にも根気強くタイムリーに対応してくださった宮崎さま上村さまに心より御礼申し上げます。
 我々が目指しているのはわかりやすくて質のよい当直ハンドブックによる日本の救急医療の改革です。是非みなさまに本書を手にとっていただき、旧態依然とする日本の当直の現場改革をお手伝いいただければと思います。
執筆陣を代表して
志賀隆

2021年もどうぞよろしくお願いいたします。

年末年始は日々の業務でゆとりがありませんでした。ただ1年の初めに目標を書いてそれを実行していくことはやはり大事だと思うので書いてみます。

 

2021年度は「発展」「開発」「コラボ」で頑張ります。

●臨床面

救急医学部門として

ー専門医が1名増員(計6名)、初の専攻医が4名、NPが2名増員(計6名)の予定です。各病院での各科との連携も徐々に発展してきています。

那須、三田、成田それぞれの大学病院で救急搬送の前年度比10%増を目指したいと考えています。

 

●教育面

今年は法人内で約600名の学生さんとお目にかかる機会があります。

医学部授業(英語、日本語)、医学部病院実習、看護学部授業、大学院授業を続けていきます。オンラインも多いですが、インタラクティブであること学習者の能動性を確保することを大事にしていきます。

2020年に出版できなかった「当直医のためのマニュアル本」を完成させて出版し、みなさまのお役に立つことができればと思います。

 

●研究面

2020年は筆頭1本、共著2本でした。立ち上げでゆとりがなく、反省をしたところです。諦めずに粘り強く論文執筆を続けて2020年を超える実績が出せたらと考えております。

「新しい分野」での論文執筆の構想もあるのでそちらも少しづつですが、続けていきたいと考えております。

色々な先生方とコラボレーションをすることができたらと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

 

●情報発信

2冊の医学書を計画しています。研修医向けの当直に役立つ本、救急基本手技の本です。

2020年には連載で30本の記事を書きました。今年も毎日新聞医療プレミア12本、エムスリー12本、メディカルノート6本のペースを維持していきます。加えて、医事新報の連載も始めたので続けていきます。

昨年同様、TV、ラジオ、新聞、雑誌などのメディアとのコラボもお待ちしております。

 

●2つのNPO

私が仲間と作った2つのNPO(救急医のEM Allianceと千葉県の医療職のための新撰医チバ)の活動を継続します。「オンラインに注力」してEM Allianceの二つの指導医養成コース、新撰医チバの夏・冬のセミナー、医学教育フェス、臨床医のためのCSIを続けます。

 

ということで2021年も「日本の幸せを増やす救急医」として楽しんでやって参りますのでコラボや応援何卒よろしくお願い申し上げます。 

^^