takshigaempのブログ

救急医!志賀隆 Takashi Shiga MD MPH

米国救急専門医です! たらい回しをなくしたい!ヘルスリテラシー・情報格差の改善を!元気で個性的な人材を育成をしたい! ※発言・文章は個人のもので組織のものではありません

ー直感を育てる!ー

「あの患者さんは数時間以内に急変するわ!」という先輩の予言?のあとに患者さんの病状が変わったこと、多くの医療者が経験しているだろう。

直感とはもともと持った能力であり、簡単に育てることができないと思うことはないだろうか?実はそうではないのである。直感は育てることができ、私も日々直感を育てる努力をしている。

では「実際に直感を育てるために何をしたらいいの?」と思われるのではないかと思う。とにかく、闇雲に経験を重ねればそれでいいか?といえばそうでもない。

ここで、救急診断学の2つの大きな考え方を紹介したい。

1つは、パターン認識である。過去の経験や文献・教科書からの知識によって形成された疾患のパターン(イルネススクリプト)と現在の患者さんの病歴・身体所見・状況が合致するかで判断していく方法である。熟練した医療者は無意識のうちにこの過程を取り診断に辿り着いていることが多い。

もう1つは、致死的もしくは重大な疾患の除外 Rule out worst case scenario(ROWS)である。救急にかかわる医療者にとって最も重要な能力と考えられる。「見逃し症例」と呼ばれるケースではこのROWSがうまくいかなった場合がほとんどである。ただ、限られた時間と医療資源の中で症例においてすべての検査をすることは困難である。そのため、医療者は患者の年齢、性別、主訴、病歴や受傷機転などから考えられる5つ程度の危険な鑑別診断のリストを持っていることが多い。

そして、上記のパターン認識とROWSの双方を伸ばすことが「直感を育てる」ことにつながるのである。

そのための秘訣として

・自身や他者の失敗体験や成功体験を記録し振り返る
・教科書や文献等にあたり現場での判断を掘り下げる
・振り返や文献検索の経験を教訓として次に生かす

ということが薦められる。

イチローなどのプロ選手や一流の音楽家になるためには10年のキャリア・1万時間の練習が必要とよく言われる。しかし、実際には同じように10年・1万時間をこなしても一流になれない場合も多い。

その差は「日々成長したいという強い希望から一つ一つの経験から学んでいるか?」にある。是非ともに直感を育ててほしい。