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救急医!志賀隆 Takashi Shiga MD MPH

米国救急専門医です! たらい回しをなくしたい!ヘルスリテラシー・情報格差の改善を!元気で個性的な人材を育成をしたい! ※発言・文章は個人のもので組織のものではありません

忙しい外来でCTをオーダー!翌日のレポート確認できますか?

-エムスリー社より一部抜粋-


◆基本は電子カルテを使ったアラートシステム

 日本の放射線科医の数は米国よりも相対的に少なく限られているため、一人当たりの読影件数は、かなり多くなってしまいます(参考1)。読影や治療にて多忙な中、放射線科医がタイムリーな読影をして院内の内線電話やメールで結果をオーダーした主治医に伝えることはかなり難しいでしょう。熱心な先生は連絡してくれるが、個人の努力に頼るのには限界があります。

 

 一番頼りになるツールは電子カルテを使った連絡方法であろうと考えます。気になる所見があれば「主治医に重要所見としてメールで通知」とクリックすれば、あとは主治医に電子カルテ内のメールが送られる、といった具合のシステムが理想です。米国では多くの病院が運用しています。

 

 しかしながら、現在は日本の電子カルテにこのような機能がないので、電子カルテを提供している各社には機能を付けるための開発費がかかります。各企業とも営利企業であり、そこに対してインセンティブがあるのか?というと、そうではないでしょう。また、日本の電子カルテは「電子カルテに合わせて病院を変えることが安全な病院につながる!」という思想で作られているものもあると聞きます。この姿勢自体が、「現場に寄り添って医療安全の強力なツール」になるという思想の下で運用している米国の電子カルテとは大きな違いがあります。

 

 ただ、米国の医療費には予算的なゆとりがあるため(効率が悪いとよく批判されるが)、上述したような電子カルテシステムが構築できているという事情もあるかもしれません。そのためか、私の働いた米国の2つの病院には、放射線科医が電子カルテから読影をオーダーした主治医に連絡できるシステムがありました。


◆国レベルでの放射線読影結果の共有の目標とコミットメント

 前回、触れたように米国にはJoint commission(JC)というメディケア・メディケイドという公的保険の対象病院になるために必要な認証を病院に与える機関があります。このJCがタイムリーな読影初見の共有を求めており、米国では所見の共有を経済的な観点から進める必要があります(参考2)。

 

 では、日本ではどうなのか?というと、日本には日本医療機能評価機構はあるものの、JCのような強い権限はありませんので、米国のように取り組む必要性はない。熱心な医師の善意によるところが多いのが実情でしょう。この現状を変えるためには、保険点数上の仕組みを作ることが一番大きなインセンティブになるのではないかと思われます。具体的には、

・重要所見の電子カルテ・メール等での共有システムがあれば追加の加算を付けるか?
・重要所見の電子カルテ・メール等での共有システムがなければ追加の加算を減らすか?

 

という検討が必要ではないでしょうか。国が診療報酬上で病院の読影システムを評価するという方針を打ち出せば、病院として「読影所見共有の仕組み作り」に、より前向きに取り組むことになると想像します。国民に対する説明責任も果たせるでしょう。そして、医師は患者さんのためにシステムを最大限活用しベストを尽くせます。

 

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https://www.m3.com/news/iryoishin/625997