takshigaempのブログ

救急医!志賀隆 Takashi Shiga MD MPH

米国救急専門医です! たらい回しをなくしたい!ヘルスリテラシー・情報格差の改善を!元気で個性的な人材を育成をしたい! ※発言・文章は個人のもので組織のものではありません

「緊急の発熱」とありふれた風邪に病院ができること -医療プレミアより抜粋ー

 

 

今ちょうど仕事が大事なときなのに、なんだかだるい。朝起きると頭ものども痛い。鼻水もでてきた。う~。残念、やはり風邪を引いてしまったか……。でも今日は火曜日。木曜日にはとても大事なプレゼンがある。その前に病院に行くべきなのか? 

 

忙しい日々の生活が予定の通りに行かないストレスは大きいですよね。風邪はもっともよくある病気で、我々にとっての悩みの種です。どうにかして「早く症状がよくなって元気になりたい」とだれしも(私も)思います。今回は風邪の治療として「病院にできること」のお話をします。

 

■ぜひ病院に行くべき風邪

 まず覚えておいていただきたいのは「治療が必要な発熱・のどの痛み」があることです。昨年書かせていただいた記事「甘く見ないで『のどの痛み』こんな症状なら即救急」で、気をつけるべき場合を書きました。具体的には以下のようです。

 「のどが痛くてつばが飲み込めない」「息が苦しい」 「首が腫れていてヒューヒュー音がする」「横になれずに常に座っている」「歩けない」。こういう状態の場合には「風邪ではない命に関わる病気」の可能性があります。救急車を呼んでの来院をご検討ください。

 

■いつも通りの「ありふれた風邪」なら

 上記のような緊急性の高い場合にはぜひ救急受診が必要です。放っておいたら命にも関わりますから、病院は来ていただいた患者さんの治療に全力であたります。

 こういう緊急の場合ではない「ありふれた風邪」は、放っておいても自然に治ります。こちらの風邪の患者さんに、病院ができることはなんでしょう。

 実は、医師としては残念ですが、大したことはできないのです。たいていは、かなりお待たせした後に短く診察して「大丈夫(ありふれた風邪)ですね」と確認し「解熱剤や、せき止めの処方」となります。「風邪がさっと治る特効薬」は残念ながらありません。

 「せっかくつらい中待ったのに!」と思われる患者さんも多いでしょう。そして「抗生物質をください」「点滴をお願いします」とおっしゃる方もいらっしゃいます。でも、どちらもお勧めできません。「お勧めできない理由」をこれから説明します。

 

mainichi.jp

 

職場の雰囲気が悪いことで失う物って? ーM3連載から抜粋ー

朝6時に目覚ましが鳴る。眠い目をこすって疲れのたまった重い体を引きずり、顔を洗って着替える。カレンダーを見ながら「今日は当直だ…」とどよーん。冷凍食品のチャーハンと餃子を温めてかきこみ、午前7時に出勤。到着するなり前日の夜に使われた薬のオーダー、抜けた点滴、採血などを終えたと思ったら、あーもうカンファレンスだ!患者さんを足早に回ってレントゲンとカルテを集めて……。

 む!なんだこの人は?見学の学生さんなんだな。とっさに口から出るのは、「そこのスペース使わないで!」「さっきも言ったでしょ!」「きちんと考えて!」「こっちの状況をみてよ!」。学生さんについ浴びせてしまうきつい言葉。そして後悔する──。

 これは初期研修医のころの私自身の苦い思い出です。

 疲労がたまっている時や多忙な時は、どうしても厳しい言葉が出てしまうことがありますよね。本来なら、「将来の仲間の候補としてとても有力」な学生や初期研修医が現場に回ってきたら、「成長した実感」や「職場の雰囲気の良さ」を感じてほしいところです。しかし、実際の現場では、「あの研修医はダメだ!」「今の研修医は自分で調べない!」「彼らはお客さんだから!」などの発言が聞かれることもあります。そんな職場があなたの病院にはないですか?実際は、どこの病院にも部分的にあてはまるところがあるのではないかと思います。

●職場の雰囲気が悪いことで失うこと

 誰だって雰囲気の悪い職場で働きたくはないですよね。一方で、事情があって一時的に雰囲気の悪い職場で働かざるをえないこともあるでしょう。では雰囲気の悪い職場の問題点はどのようなところにあるのでしょうか?

 雰囲気の悪い職場の多くは、情報共有が不明瞭です。逆に言えば、情報が一部で閉ざされていてなかなか伝わってこない場合には、必然的に職場の雰囲気が悪くなってしまいます。そうすると、いろんな臆測が生じたり、不正確な情報での行動が起きてしまうようになります。これは、ミスにつながりやすいんです。

 また、職場の雰囲気が悪いと早期離職につながります。離職率が高いと常に採用と教育が必要になり、組織としてゆとりがなくなります。結果さらに職場の雰囲気が悪くなるという悪循環になりかねません。

 一方、雰囲気の良い職場はどうでしょう。医療の現場では、救急外来の医療安全意識が高ければ、ミスの手前でストップされることが多いと報告されています(参考1)。患者さんに迷惑がかかる前に、なんとかストップしたいところですよね。

 では、「雰囲気が良い」とはどのような職場なのでしょうか?ビジネスの世界の情報を見てみましょう。ハーバードビジネスレビューでは過去の記事で、「夢の会社の6つの要素」について解説をしています。それらは以下の通りです(参考2)。

・働く人の多様性がある
・情報が抑圧されたり歪んだりしない
・会社が社員に価値を与える
・会社が意味のある何かに向けて活動している
・仕事にやりがいがある
・ばかばかしいルールがない

 当たり前に聞こえますが、すべてを実現するのは簡単ではありません。例えば多様性についてですが、女性医師を増やし長く働ける職場を作ることは、男性医師の働く環境を良くすることにつながります。しかし、職場の考え方や雰囲気が硬直しているとなかなか女性が輝くような環境づくりに舵をきれません。

 実現に向けてどのようなことをすれば良いのか。私は、2011年にアメリカから帰国をし、その後東京ベイ浦安市川医療センターの救急部門の立ち上げに、院長補佐兼救急部長として加わりました。その際には、以下の3つの大きな方針を立てました。

・権限移譲
・情報の透明性
・わかりやすいルール

 「各部門にどこまで権限と責任が与えられているのか」を事前に明らかにしないと、各部門の責任者は主体性を持って行動ができません。意味のある仕事、やりがいのある仕事の大部分はこの主体性をどのように持ってもらうかにかかっています。

 救急部門の中でも、「外傷はA先生、小児救急はB先生」といった具合に、得意な臨床分野を決めてもらいました。担当する分野の他部門との交渉、質改善プロジェクトや研究をチームの他のメンバーがサポートして、最終的に個人のブランド確立につなげるようにしていました。

 情報共有に関しては、部門内の医師のみが閲覧できる環境で、部門の検討事項、決定事項、現在の進捗状況、短期・長期目標に関して、メンバーが閲覧と投稿をどんどんできる環境を作りました。メールも可能な限り部門の全メンバーに転送やCCをするようにして、私の考えや取り組み、メンバーの考えが電子的に共有されるようにしました。もちろん、オフラインで週に一度スタッフのミーティングをして顔のみえる関係も維持しました。

 続きはこちら

アナフィラキシーには「オッサン筋注」か?エピペンか? M3連載より抜粋

2015年に大阪府高石市の病院で当直を務めていた非常勤医師がアナフィラキシーの治療で適正量の2倍を超えるアドレナリンを点滴静注で投与した結果、患者さんが亡くなってしまったという報道が今月初旬にありました。救急対応をある程度は経験した医師からすると「アドレナリンの点滴を最初から?」「本当?」と思うところもありますが、「餅屋は餅屋」であり、それは医師の専門性にも言えること。アナフィラキシーの対応を随分していない場合や、疲労が蓄積している状態で緊急時対応を担った際などは、起こり得るとも思います。そこで今回は、アナフィラキシーの初期対応について、医療安全の視点から提案も含めて書いてみたいと思います。キーワードは「短期記憶の低下」と「制約の原則」です。

●短期記憶の低下はいつ誰に起こるのか?

 まず短期記憶についてですが、知的能力の高い人の特徴は短期記憶が優れていると言われています。医学部受験を乗り越え、医学部6年間を闘い、国試受験に合格した医師のほとんどは短期記憶が優れていると言えるでしょう。ただ、これには問題点があります。この短期記憶というのは、

・急いでいる
・緊迫している
・課題がとても多い

などのストレスがかかった状況では著明に低下してしまうのです。常日頃対応している知識や業務であれば、長期記憶となっているため、「久しぶりに自転車に乗る」といった具合で問題なくこなすことができます。しかし、夜間外来や当直の際に自身の専門でない分野の緊迫した患者さんに対応する場合には、短期記憶をつかさどる脳の部分がストレスにより圧迫され、機能低下や機能不全が起こり、覚えていたはずの知識などを活用できなくなることがあります。

 アナフィラキシーの治療ではアドレナリンの投与が必要です。通常は筋肉注射から始めますが、場合によって微量の点滴や微量の静脈注射を行うこともあります。ただ気を付けなければならないのは、静脈投与の際にアドレナリンが過量になってしまうと、患者さんに不幸な結果が起きることがあります。アナフィラキシーに対応する際、毎回アドレナリンを投与する際の適正量を計算できれば良いですが、急がなければならない状況も多々あります。

 こんな時に頼りになるのが語呂合わせです。もちろん、アナフィラキシーの診断と治療については色々と大事な点やエビデンスはありますが、あえて私は、友人の中山祐次郎先生(総合南東北病院外科医長)が作ってくれた語呂合わせ

アナフィラキシーにはアドレナリンのオッサン筋注!」

を研修医の先生方に唱えたいと思います。もうお分かりですよね?「オッサン」とは「0.3mg」の語呂合わせ。「オウ、テン、サン」から・・・「オッサン」になります(笑)。少し無理があるような気もしつつ、だからこそ覚えられそうですよね?アドレナリン0.3mg筋注は、アナフィラキシー治療の本丸です。アドレナリンを投与するのは常識なので、用量と投与経路をばっちりカバーしている「オッサン筋注」とだけ覚えてしまい、緊急時の応急処置としてまず実施していただき、その後、専門医などに応援を求めたり、対応マニュアルを読んでいただくのが良い、と思います。

●制約の原則

 次に制約の原則です。いわゆる「エラープルーフ」という考え方ですね。医療安全を確保するための取り組みは色々とありますが、私がハーバード大学の大学院で医療安全について学び、以前の病院にて医療安全委員会の副委員長を5年ほど務めた経験から重要性を実感しているのが、医療安全の原則として「エラーやミスが起こらないように仕組みを作る」ことの重要性です。よく知られているのは、例えば「二酸化炭素ボンベの配管は酸素ボンベの配管とはつながらないようにする」で、直近では2012年に大規模急性期病院で二酸化炭素と酸素のボンベの混同があり、患者さんの容態が悪化するというケースがありました。現在では基本的に、医療用の二酸化炭素のボンベは酸素とはつながらない形状になっています。

●院内ではエピペンが「エラープルーフ」では?

続きはこちらから ^^

 

https://www.m3.com/news/iryoishin/668671

優秀な医師ほどバーンアウトする? 

ーーエムスリーの連載から部分的に転載ですーー

 

私が2006年に渡米して2年目の冬、ミネソタ州メイヨ―クリニックにいた頃でした。日曜日の朝、当直明けでくたくたな状態のままコーヒーショップでエスプレッソを注文して待っていると、「私が注文したのは〇〇ラテの■サイズなのに!!あなたたちは何を考えているの!これでまた何分も余計に待たなければならないわ!信じられない!」と大きな声で店員に話をしている女性がいました。どこかで聞いたことのある声と思い振り返ると、外傷外科をローテ―トしているジャネット(仮名)でした。

 その頃の私は、徐々に救急レジデントとしての成長を実感している時期。ジャネットは、私が渡米1年目の冬に外傷外科ICUのローテーションを一緒にやり遂げた仲間の一人でした。

 当時メイヨーの外傷外科は「指導医が熱血」と評判(?)で、朝5時半から患者さんのラウンドをして4~5日に一度は当直が回ってくるという環境。大変忙しく、互いに疲れ果てていましたが、ジャネットはデータの把握や患者さんのアセスメントが常に的確でした。さらに患者さん思いで、ご家族とも信頼関係を構築していて「すごいレジデントだなあ」と思っていたのを覚えています。

 しかし2年目、「これがあのジャネットか?」と思うほど印象が変容してしまいました。私のいる救急から外科の患者さんのコンサルトをした際には「こんな時間に来るなんて!何を考えているの!」「あなたたち救急と違って私たちは忙しいの!!」など、極度の疲労からか、冷静さを失った発言を繰り返していました。「あの優秀なジャネットが、随分変わってしまったなぁ」と感じていた矢先に、前述のコーヒーショップでのエピソードがありました。ジャネットには声をかけられませんでした。

 その後、3年目となった私はシニアレジデントとしての仕事やフェローシップ応募の準備、論文執筆などで忙しくなり、ジャネットのことは頭のどこかにいってしまっていたところ「ジャネットが外科を辞めて別のプログラムに移った」と友人から聞きました。彼女だけでなく、何人もの友人が別のプログラムに移ったり、レジデンシーを中止したり、診療中にノンプロフェッショナルな言動をするようになったりしていました。今ですと、SNSへの書き込みなども該当するかもしれません。そんな姿を見たり、話を聞いたりして、残念な気持ちになった自分を覚えています。その当時はどうしたらいいか分からなかったのですが、今こうして指導医になってみると、「それらの変化はバーンアウトであったのだろう」と思います。今は、「バーンアウトの症状のある同僚やレジデントがいたら、なんとしても助けたい」と思っています。

バーンアウトは「人生の急停止」、避けるには?

 ではどのようにしてバーンアウトの状態になってしまうのでしょうか?具体的には医師自身の「感情・人生の優先順位・成長の実感・周囲からの助け・心身の健康」が満たされていない場合にバーンアウトが起こります。日本では、医師のバーンアウトウェルネス(健康を基盤に生き甲斐をもって生き生きとしている状態)について記載された本があまりありません。また、日本の文化で重要な「勤勉さ」が、このような問題は個人の問題だとして片付けてしまう傾向があります。これは大きな間違いで、海外ではウェルネスの教育プログラムはよく取り入れられています(参考1)。

 フランスで行われたSESMAT研究では、医師の30~40%がバーンアウトを感じたことがあり、特に救急医の離職やバーンアウトが、他の専門診療科よりも多いと指摘されています。仕事と家族の対立、チームワークの質が、それぞれバーンアウトの独立危険因子であるとも指摘されています(参考2)。

 バーンアウトになる要素は大きく分けて下記の3つです(参考3)。

・感情の消耗(極度の疲労などの影響で)
・個人的な業績の興味の低下(仕事の意味や目的を失うことを含む)
・非人格化(まるで物のように扱われていると感じる等を含む)

 一般的には、この3要素の組み合わせで起こると定義されており、比較的精神面を意味するウェルネスと、疾患に罹患していないなど身体面の健康の両方がなくなってしまった時に生じる、いわば「人生の急停止」です。うつ病が国際的に認められた公式の精神疾患なのに対して、バーンアウトは「職場で過度の要求にさらされた労働者に見られる機能不全や著しい疲労」などと定義されますが、バーンアウトの基準が国際的に定まっておらず、うつ病など他の疾患と明確に区別できていない状況も、職場での対処を難しくしていると言えます。このため、多くの医師が「どのようにバーンアウトに対処するべきか」という方法を知らず、じっと耐えることが多いようです。

●WLBを促進する7要素と、バーンアウトに対処する8つの方法

 バーンアウトは自殺、人間関係の悪化、アルコール・薬物依存などにつながります。さらに医師の場合は、診療の質、患者の安全、エラー、医療ミスの申し立て、患者の満足度・コンプライアンスにも関わってくるため本人だけの問題ではありません。どうしたらバーンアウトを避けられるのか?ですが、Bintliffらは、研究結果から7つの方法で医師の満足度と医療環境下でのワークライフバランス(WLB)を促進する有効性を報告しています(参考4)。

○ 有意義な仕事、他者の助けになる、自身の研修・能力と関連の薄い仕事を最小限とする
○ 能力や興味、リソースに見合った挑戦
○ 専門的な能力習熟の機会がある、成長を助けてくれるメンターの存在
○ プロフェッショナリズムや専門家としての満足度を育む文化がある
○ 自主的で柔軟性のあるスケジュール
○ プライベートを楽しみに価値のあるものにできる
○ 健康の向上

 医療の現場で共に研鑽を積む仲間としては、私がジャネットに対し「らしくないな」と感じた時などが、バーンアウトの兆候を捉えたと言える可能性もありますが、「時、既に遅し」の場合もあるでしょう。バーンアウトへの対処法についてBintliffらの研究では、下記8つを挙げています(参考4)。

 

私の対処法なども含めた続きはこちらで ^^

 

www.m3.com

“ウザい指導医”になってないか心配じゃないですか?

ーーエムスリーの連載から部分的に転載ですーー

 

研修医の行動を見ていて「患者さんを診ている時間より、自分のノートパソコンやスマートフォンの画面を見ている時間の方が長いんじゃないか!?」と感じ、思わず「そんなんじゃダメだ!」と指摘したという経験はありますか。実際サボっているのならきちんと指導すべきですが、最近はパソコンやスマホで勉強するのは当たり前。

(指導医だってスマホやパソコンを見ているとき多いですよね。反省反省 ^^)

 

頭ごなしに叱ってしまうと、「担当する患者さんのために手技の予習をしていたんです」だったり……。そこで今回は、“ウザい指導医”にならないための「うまくいくフィードバックの10カ条」について述べたいと思います。

 

●匠のフィードバック10カ条

 指導医が「これを伝えたい!」と感じ、良かれと思って伝えても、“ただ伝えるだけ”ではなかなかうまくいきません。フィードバックにはコツがあります。釈迦に説法ですが、「相手あっての共同作業」だからです。

 

1.ポジティブフィードバックを与える

 コミュニケーションですから、相手との信頼関係が必要不可欠。そして、多くの学習者は、ポジティブなフィードバックを求めています。ですので、最初に「良くできた点」をほめ、次に改善すべき点を指摘し、“締め”に再度良くできた点をほめる方法(有名な「ポジティブサンドウィッチ」)がお勧めです。最初に、ほめることで受け手側との関係性を築き、学習者がフィードバックを受け入れやすくする環境を作ります。「先生は優秀なんだけど、さらに一段、階段を上がれる方法があるよ」のように、学習者の意欲につながるような枕詞を使って導入するのもお勧めです。ただ、分かりやすいお世辞はすぐに見透かされてしまうので、やり過ぎは禁物です。

 スマホをよく見ている研修医に助言したいのであれば、「先生、スマホで良い情報見付かったかな?スマホは便利だよね」などの声掛けから始めるのはいかがでしょうか。

 

2.具体的な行動・行為に言及する

 「君はペースがゆっくりしている!」「そんなやり方ではだめだ!」など、抽象的な指摘は好まれません。「では具体的に何をしたらいいの?」という疑問が生じるからです。それよりも、「来院からCTまで1時間かかるのは遅い」「来院から入院まで4時間かかるのは問題だと思う」など、とにかく具体的な行為・行動を指摘しましょう。その際、その行動の背景となったフレーム(思考や感情)も探索し、学習者自身の気付きを促しましょう。また、混雑やマルチタスクなど、学習者の行動の障壁になった点については共感してあげることも大事です。

 

3.前向きなフィードバックを与える

 指導医の心情としては、研修医の問題点を批判的に指摘したくなるでしょう。しかし実際は、指導者と学習者が将来を見越して建設的に話し合うことが求められます。問題点を指摘したら「どうすればうまくいくか?」などについて前向きに話し合いましょう。

 

4.学習者自身にアセスメントを促す

 指導医が「あの患者にはこうするべきだ」と言うのではなく、「今日は何が一番勉強になったポイント?」「一番学びのあったケースは?」と研修医自身に振り返りを促すようにしましょう。自分で課題を見付けて解決していくプロセスが何より重要です。

 

5.時間・場所をしっかり確保(タイミングに配慮して)

 多忙な相手へのフィードバックは、効果的ではないでしょう。患者安全に関わるなど速やかな対応が必要な場合を除き、研修医の手が空いた時やシフト終了後など、時間に余裕があるタイミングを見付けましょう。ただ、フィードバックは遅すぎると効果がないため、注意が必要です。

 フィードバックする際の場所も重要です。ネガティブなフィードバックを第三者に見られるのは嫌なものです。「ほめる時は人前で、改善点の指摘は人目のないところで」を意識しましょう。

 

6.学習者を圧倒しない

 フィードバックの際に、指導医が感情的・威圧的に研修医を圧倒してはいけません。成長意欲を削いでしまいます。また、フィードバックする内容の「量」にも配慮が必要です。膨大な助言を一気に与えるのではなく、受け手側の許容量を見極めます。また、性格、習慣、出身大学、研修病院など変化できないことは指摘してはいけません。単なる個人攻撃にならないよう意識する必要があります。これらの要素に気を付けながら、指導医自身は研修医の「あくび」やカルテを書きながら聞く「ながら態度」など、イライラのトリガーをあらかじめ把握した上で、「アンガーマネジメント」(過去記事『「研修医よ、なぜ忘れる!」と怒ってはダメ』参照)を意識しながら「フィードバック」という流れで対応しましょう。

 

7.中立的な態度で

 研修医が直面している状況や診療結果などを、一度受け止めた上で指導に入ります。指導医の経験や考えを押しつけ過ぎない中立的な立場が望ましいです。例えば、非典型的な胸痛で来院した急性大動脈解離の見逃しがあった時は、「胸壁に圧痛があるから(急性大動脈)解離を除外した君の判断は間違っている」と頭ごなしの評価ではなく、「非典型的な解離って難しいね。胸壁に圧痛があったとしても、明らかな外傷歴がなければ、やはり解離やACSを除外しない診療姿勢が救急医として大切だと僕は思うけどどうだろう?」というように難しい部分があったことに共感を示した上で改善を一緒に考える必要があります。最初から批判的な意見を浴びせてしまうと、聞く耳を持ってくれなくなります。指導者の意見がいつも正しいわけではありませんしね。

 

8.学習者・指導者の共同作業で

9.教育モデルを応用する

10.改善のための策をアシストしフォローする

 

続きはこちらで ⇓  ^^

 

[参考図書] ・研修医指南書「今の若者は・・・・・・」って、嘆いていませんか?(志賀隆、メディカルサイエンス社、2017年)

 

www.m3.com

コンサルトのうまいコツ、教えます ー気持ち良く仕事するためのちょっとした工夫の積み重ねー

コンサルトについてエムスリーに記事を書きました。以下一部貼り付けます。 ^^

ーー

私は、指導医セミナーを年2度開催しており、そこでよく参加してくださった指導医の先生方に

「コンサルトは短い方が良いか?長い方が良いか?」

と聞いています。圧倒的に多い答えは

「短めのコンサルトを求めている」

なんです。内科系でも外科系でもです。

 

では、「常に短いコンサルトが良い」のでしょうか?実際は、救急からコンサルト依頼で電話をかけた場合、電話をかけた側の先生が受話器の向こう側の先生から質問をたくさん受けて、ずっと電話から離れられないという場面をしばしば見かけます。これはなぜか?というと、患者さんの状態やコンサルタント側の科の特徴、性格、業務状況によって変わるからです。コンサルタント側も電話を聞きながら、

 -メモを取ろうとしている
 -電子カルテ端末まで移動している
 -今日の自分の業務内容を再確認し判断をするための準備をしている

など、さまざまな事情もあるからです。

従って私は、「短いコンサルトで良い」のか、「より詳しい情報がほしい長いコンサルトが良い」のかを、相談を受ける側であるコンサルタントの先生が判断できるようなプレゼンテーションが良いと考えています。具体的には、

 -短いコンサルトで終わっても大丈夫なように要点をまとめる
 -長くなっても大丈夫なように、より詳しく説明するための情報を揃える

の2段階で準備をしておくのが理想的です。要約した情報を伝え、コンサルタントの先生に求められた場合に、補足情報を伝えていくというスタイルです。以下、さらに詳しく段階に分けて見ていきましょう。引き続き、最も多いであろう電話でコンサルト依頼を相談する場面です。

I)「何のためのコンサルトか?」を明確にすることをお勧めします。

―(肺炎の)入院のご相談です―
―(虫垂炎の)手術適応のご相談です―
―(肩脱臼の)次回外来のご相談です―
―(解放骨折の)治療法の選択についてのご相談です―

などですね。大事なのは、診断名と相談の内容を必ず最初にお伝えすることです。先ほどの例であれば「虫垂炎疑いの患者さん」についての相談であることをまず明確にすべきでした。CTも確認できていますので、外科の先生は手が空いていたらすぐに来てくれるでしょう。

II)虫垂炎のように明確でなければ、ごく短いサマリーで「状況・背景・判断・提案」の4つを意識して伝えるコミュニケーションスキル「SBAR(エスバー)」を用います。

例えば、

 「S」 Situation :発熱、低酸素で来院した70歳の女性で

 「B」 Background : 既往に糖尿病と高血圧があります

 「A」 Assessment : X線にて肺炎の所見があり、培養後抗生物質を投与しています。

 「R」 Recommendation : 入院が必要と考えております。


のようになります。

ここまでの段階で、もしコンサルタントの先生から

 「分かりました。いま診ている患者さんの処置を終えて救急に行きます」

と返答があれば、電話は終了です。

III)電話が終了せず、以下のような質問があれば長めのプレゼンに切り替えます。

―発熱は何日間ですか?-
―胸部の聴診所見は?-
―痰の性状は?-

質問に答えつつ、「もう少し詳細な情報をお伝えさせてください」などと前置きし、カルテに沿って、「主訴」「現病歴」「システムリビュー」「既往歴」「内服薬」「社会歴」「アレルギー」「バイタルサイン」「身体所見」「検査所見」「初期評価と対応」などについて伝えていきます。

 最近、私は「コンサルトにあまり自信がない」という研修医の先生には、「I」、「II」を確認したあと、カルテと格闘する時間を5分ほど取ってもらい「III」にも対応できるよう準備を整えてからコンサルト依頼の電話するように指導しています。

 

米国の参考例などのさらにコンサルトについて知りたい方!

続きはこちらから! ⇓

 

www.m3.com

2019年も何卒よろしくお願い申し上げます :)

f:id:takshigaemp:20190102225426j:plain

みなさま 
本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

2019年は2020年のオリンピックかつ成田の医学部附属病院の開院にむけて大事な年になるので、大事に一歩一歩進んでいければと思います。

今年も変わらず ◆救急体制◆人材育成◆ヘルスリテラシーをキーワードに頑張ります。

●研究面
・今関わっている10のプロジェクトを論文に仕上げる。
・新しいコラボレーションの機会を作る。
・更なる研究資金の獲得。

●臨床面
・日々新しい学びを持って進む。
・成田の体制をさらに充実させる。
・アンガーマネジメントをさらに磨く。

●教育面
・ベッドサイド教育の機会を増やす。
・大学での授業内容をアップデート。
・教育系の研究の論文化を進める。
・医学教育フェスティバルを開催する。
・救急医学会総会を盛り上げる。

●情報発信
ツイッターでの学び・交流を続ける。
・情報発信のコラボの機会を増やす。
・連載を続ける。
・本を出す。

至らぬ点の多い私ですが 日々学んで参りますので何卒よろしくお願い申し上げます。