takshigaempのブログ

救急医!志賀隆 Takashi Shiga MD MPH

米国救急専門医です! たらい回しをなくしたい!ヘルスリテラシー・情報格差の改善を!元気で個性的な人材を育成をしたい! ※発言・文章は個人のもので組織のものではありません

“ウザい指導医”になってないか心配じゃないですか?

ーーエムスリーの連載から部分的に転載ですーー

 

研修医の行動を見ていて「患者さんを診ている時間より、自分のノートパソコンやスマートフォンの画面を見ている時間の方が長いんじゃないか!?」と感じ、思わず「そんなんじゃダメだ!」と指摘したという経験はありますか。実際サボっているのならきちんと指導すべきですが、最近はパソコンやスマホで勉強するのは当たり前。

(指導医だってスマホやパソコンを見ているとき多いですよね。反省反省 ^^)

 

頭ごなしに叱ってしまうと、「担当する患者さんのために手技の予習をしていたんです」だったり……。そこで今回は、“ウザい指導医”にならないための「うまくいくフィードバックの10カ条」について述べたいと思います。

 

●匠のフィードバック10カ条

 指導医が「これを伝えたい!」と感じ、良かれと思って伝えても、“ただ伝えるだけ”ではなかなかうまくいきません。フィードバックにはコツがあります。釈迦に説法ですが、「相手あっての共同作業」だからです。

 

1.ポジティブフィードバックを与える

 コミュニケーションですから、相手との信頼関係が必要不可欠。そして、多くの学習者は、ポジティブなフィードバックを求めています。ですので、最初に「良くできた点」をほめ、次に改善すべき点を指摘し、“締め”に再度良くできた点をほめる方法(有名な「ポジティブサンドウィッチ」)がお勧めです。最初に、ほめることで受け手側との関係性を築き、学習者がフィードバックを受け入れやすくする環境を作ります。「先生は優秀なんだけど、さらに一段、階段を上がれる方法があるよ」のように、学習者の意欲につながるような枕詞を使って導入するのもお勧めです。ただ、分かりやすいお世辞はすぐに見透かされてしまうので、やり過ぎは禁物です。

 スマホをよく見ている研修医に助言したいのであれば、「先生、スマホで良い情報見付かったかな?スマホは便利だよね」などの声掛けから始めるのはいかがでしょうか。

 

2.具体的な行動・行為に言及する

 「君はペースがゆっくりしている!」「そんなやり方ではだめだ!」など、抽象的な指摘は好まれません。「では具体的に何をしたらいいの?」という疑問が生じるからです。それよりも、「来院からCTまで1時間かかるのは遅い」「来院から入院まで4時間かかるのは問題だと思う」など、とにかく具体的な行為・行動を指摘しましょう。その際、その行動の背景となったフレーム(思考や感情)も探索し、学習者自身の気付きを促しましょう。また、混雑やマルチタスクなど、学習者の行動の障壁になった点については共感してあげることも大事です。

 

3.前向きなフィードバックを与える

 指導医の心情としては、研修医の問題点を批判的に指摘したくなるでしょう。しかし実際は、指導者と学習者が将来を見越して建設的に話し合うことが求められます。問題点を指摘したら「どうすればうまくいくか?」などについて前向きに話し合いましょう。

 

4.学習者自身にアセスメントを促す

 指導医が「あの患者にはこうするべきだ」と言うのではなく、「今日は何が一番勉強になったポイント?」「一番学びのあったケースは?」と研修医自身に振り返りを促すようにしましょう。自分で課題を見付けて解決していくプロセスが何より重要です。

 

5.時間・場所をしっかり確保(タイミングに配慮して)

 多忙な相手へのフィードバックは、効果的ではないでしょう。患者安全に関わるなど速やかな対応が必要な場合を除き、研修医の手が空いた時やシフト終了後など、時間に余裕があるタイミングを見付けましょう。ただ、フィードバックは遅すぎると効果がないため、注意が必要です。

 フィードバックする際の場所も重要です。ネガティブなフィードバックを第三者に見られるのは嫌なものです。「ほめる時は人前で、改善点の指摘は人目のないところで」を意識しましょう。

 

6.学習者を圧倒しない

 フィードバックの際に、指導医が感情的・威圧的に研修医を圧倒してはいけません。成長意欲を削いでしまいます。また、フィードバックする内容の「量」にも配慮が必要です。膨大な助言を一気に与えるのではなく、受け手側の許容量を見極めます。また、性格、習慣、出身大学、研修病院など変化できないことは指摘してはいけません。単なる個人攻撃にならないよう意識する必要があります。これらの要素に気を付けながら、指導医自身は研修医の「あくび」やカルテを書きながら聞く「ながら態度」など、イライラのトリガーをあらかじめ把握した上で、「アンガーマネジメント」(過去記事『「研修医よ、なぜ忘れる!」と怒ってはダメ』参照)を意識しながら「フィードバック」という流れで対応しましょう。

 

7.中立的な態度で

 研修医が直面している状況や診療結果などを、一度受け止めた上で指導に入ります。指導医の経験や考えを押しつけ過ぎない中立的な立場が望ましいです。例えば、非典型的な胸痛で来院した急性大動脈解離の見逃しがあった時は、「胸壁に圧痛があるから(急性大動脈)解離を除外した君の判断は間違っている」と頭ごなしの評価ではなく、「非典型的な解離って難しいね。胸壁に圧痛があったとしても、明らかな外傷歴がなければ、やはり解離やACSを除外しない診療姿勢が救急医として大切だと僕は思うけどどうだろう?」というように難しい部分があったことに共感を示した上で改善を一緒に考える必要があります。最初から批判的な意見を浴びせてしまうと、聞く耳を持ってくれなくなります。指導者の意見がいつも正しいわけではありませんしね。

 

8.学習者・指導者の共同作業で

9.教育モデルを応用する

10.改善のための策をアシストしフォローする

 

続きはこちらで ⇓  ^^

 

[参考図書] ・研修医指南書「今の若者は・・・・・・」って、嘆いていませんか?(志賀隆、メディカルサイエンス社、2017年)

 

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