マルチタスクせねばならん… コツは? Part 1
救急の現場など本来避けたいマルチタスクをせねばならない職場もある。そのコツについて解説したい。
人間の記憶には長期記憶、短期記憶がある。短期記憶は、作業記憶とも呼ばれ個々の違いはあるものの限られた能力である。一般にタスクスイッチでは短期記憶が最も重要になる。しかし、個々に限界のある短期記憶では一定の時間の中に処理できるタスクの量が決まっている。
一方、長期記憶は無限とも言われる。その為、医師個人としては、短期記憶の限界を知りつつ、自らの長期記憶を育て、タスクスイッチに利用をしていく必要がある。
具体的に個人レベルでできるタスクスイッチの効率化のための対策は以下になる。
1)優先度を決める
2)練習をする
3)思考過程を確立する
4)必要な物品は手元に揃えて置く
5)タスクのバンドリング
1)優先度を決める
重要度・緊急度から現在のタスクを一時中断して次のタスクに行くべきなのか?そうではないのか?を判断することが望まれる。
2)練習・学習する
手技、診断、医学知識などを練習・学習することによってそれらのタスクがあまり負担とならなくなる。例えばイルネススクリプトが増えることによって診断にかかる労力が飛躍的に減少する、などはこの一例である。究極的にはタスクは自転車にのるのと同じように自動化される。
3)思考過程を確立する
よくある主訴や問題の病歴聴取・鑑別・診断戦略などの思考過程・よく行う手技のピットフォールなどを自分なりにまとめて法則化することで診療が効率化できる。
4)必要な物品は手元に揃えて置く
鋏、ペンライト、スマートフォンなど必要な物品が手元にあるとタスクの中断が少なくなることは想像に難くないであろう。逆に、これらが手元にないと診察や診療の際に何度も席を立つことになる。
5)タスクのバンドリング
強い腹痛の高齢者が搬送された際には、診療の開始時点から入院となる・CTを撮影する・外科医にコンサルトするという前提で診療をすることが望ましい。後から追加の検査や治療が次々に加わると診療チームのエラーの原因となる。また、必要な検査・治療が抜けてしまう可能性がある。
Can You Multitask? Evidence and Limitations of Task Switching and Multitasking in Emergency Medicine.
Ann Emerg Med. 2016 Aug;68(2):189-95.
PMID: 26585046
CJEM. 2004 Jul;6(4):271-6.
Strategies for managing a busy emergency department.
PMID: 17382005