takshigaempのブログ

救急医!志賀隆 Takashi Shiga MD MPH

米国救急専門医です! たらい回しをなくしたい!ヘルスリテラシー・情報格差の改善を!元気で個性的な人材を育成をしたい! ※発言・文章は個人のもので組織のものではありません

NPの増加こそ医療界を救う秘策 医療の質は向上! -M3より抜粋ー

以前、こんな場面がありました。


 私が駆け付けると80歳の女性が救急搬送で到着したばかりでした。老人ホームで朝ごはんを食べた後に失神したとのこと。同僚の田中さんが、バイタルサインを測り、モニターを着け、静脈路確保、採血、心電図、心エコーをてきぱきとこなしてくれているところでした。そこに「35歳の男性が階段の踊り場で耳から血を流して倒れていた」という新たな受け入れ要請が。すかさず、田中さんが「先生!この患者さんは痙攣の既往で当院受診歴もあるようです。意識も悪く、耳からの出血ということで頭蓋骨骨折も疑われるので放射線を呼んでおきますね。まずABCの確認とは思いますが、頭部CTと採血、静脈路確保はオーダーしておこうかと思います!」とタイミングよく提案をしてくれる。その後も「今日の脳外科オンコールは松村先生だ!CT取ったらすぐ電話、電話」と田中さんはつぶやく……。


 実にテキパキとした働きぶりです。研修医の先生は2~3カ月で次の科へ行ってしまいますが、田中さんとは同じ職場で働くようになってもう2年になる。もちろんプロとして意見が対立することもありますが、とても心強い仲間であると思っています――。

 

 さて、先生方の病院に診療看護師(Nurse Practitioner:NP)はいますか?そうです。この頼もしい「田中さん」の様子は、私が普段一緒に働いているNPさんたちの色々な実際のエピソードから書いてみました。

 

 今回は、今後の高齢化・医師偏在など、取り組むべき課題の多い日本の医療現場に必要不可欠と思われるNPについて考えを述べてみます。医師の働き方改革などの観点からも話題になっている、タスクシェアやタスクシフトの考え方とも密に結び付きますので、避けては通れない話題になってきています。医行為のうち、医師が事前に手順書などを定めて包括的な指示を出しておける行為については研修を修了した看護師に実施を認める『特定行為研修制度』を国が進めておりますが、ここでは、日本NP学会が認定するNPについて述べます。私自身、国際医療福祉大学の大学院でNPの教育に講義や実習という形で携わっております。また、研修医の臨床研修と同様に、NPの卒後研修制度を院内で整備しています。

●どういう訓練を積むとNPと呼ばれるの?

 NPになるためには、5年以上の看護師の実務経験の後にNP養成の大学院(2年間)に通います。日本には、現在7つのNP養成の大学院があります。多くの大学院では1年目は座学が中心で、大学院の2年目は臨床現場の実習で医師とともに記録の記載やアセスメントの実際を体験します。そして大学院の卒業時にはNP学会の実施するNP認定試験を受験します。一般的に、この全てをクリアした看護師さんをNPと呼んでいます。

 NPの資格を取った後には、卒後の研修をするNPもいます。私たちの施設では研修中は、救急、内科、外科など複数の科をローテ―トすることで現場における診療能力を高めていきます。その後、卒後2~3年を目安に、救急、内科、外科と、それぞれのキャリアのゴールに合わせながら研修を進めます。日本でも米国でも研修修了後には、循環器内科のNP、消化器外科のNP、救急のNPといったように、自身がメインで働く領域を決めて長い期間働く方が多いです。

●NPが必要な3つの理由

 今後の日本の医療にNPが必要だと私が考える主な理由は下記の3点です。

1)医師と看護師、両方の仕事を知っているため、業務が円滑に

 職場のデザインが良かったり、優秀なリーダーがいたりして、NPがいなくても医師と看護師が問題なくスムーズに働けている部門も多いです。ただ、解決すべき課題のある部門もあります。例えば、アクティブな外科系の日中の病棟や、患者はたくさん運ばれるが人手に限りのある救急外来などは典型的ですね。内科系であっても、ベテランの医師が外来で忙しく入院患者の対応が後手に回ったりすることがあります。こんな病棟にNPがいると、質を保ちながら収益の柱である入院診療を支えることができます。


 例えば、午前のラウンドをNPさんに任せて(重要な報告は適時してもらいつつ)医師は午後に回ることにするのも可能でしょう。職場にNPがいると、看護と診療、患者と診療チームなどのコミュニケーションがとても円滑になります。実際、私も複数の患者さんが搬送された際にあるNPさんが「先生!この患者さん手術になりそうなので心電図と胸部X線を撮影しようと思います!」と提案してくれてとても助かったことがあります。加えて、医師が多忙で取り組めなかった人工呼吸器設定、輸液栄養管理、輸液路の確保、創傷管理など大小の問題に、NPがタイムリーに取り組むことができます。結果、診療の質の向上が得られていきます。

 

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